惑星科学:土星の環が若々しい外観を保っている理由
Nature Geoscience
2024年12月17日
岩石の破片が衝突することによる汚染に耐えるため、土星の氷の環は見た目よりもはるかに古い可能性があることを報告する論文が、Nature Geoscience に掲載される。著者らは、土星の環は惑星自体と同じくらい古い可能性があると示唆しており、環が清潔で若々しく見えるというこれまでの推定年齢に異議を唱えている。
土星の環は、かつては古代のもので、おそらく惑星自体と同じ時期、つまり約45億年前に形成されたと考えられていた。しかし、2004年に土星探査機カッシーニ(Cassini)が土星に到達した際、土星の環は比較的明るく清潔に見えることが観測された。そのため、研究では土星の環は4億歳未満であると推定されている。
兵頭 龍樹らは、コンピューターモデルを使用して、微小隕石と氷の環粒子の衝突をシミュレーションした。その結果、高速衝突により微小隕石が蒸発し、その蒸気が土星の磁場内で膨張、冷却、および凝縮して帯電したナノ粒子やイオンが形成されることが分かった。兵藤らによるシミュレーションでは、これらの荷電粒子は土星に衝突するか、大気中に引きずり込まれるか、あるいは惑星の重力圏から完全に脱出することが明らかになった。その結果、著者らは、この物質のほとんどが環に堆積することはないため、環は比較的きれいな状態を保っていると示唆している。著者らは、環の汚染レベルが非常に低いことは、土星の環が実際には数十億年前のものであり、単に若々しい外観を保っているだけである可能性を示唆している。
さらなる研究が必要ではあるが、著者らは、このプロセスは天王星と海王星の環、および巨大惑星の周りの氷の衛星でも起こっている可能性があると示唆している。
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- Published: 16 December 2024
Hyodo, R., Genda, H. & Madeira, G. Pollution resistance of Saturn’s ring particles during micrometeoroid impact. Nat. Geosci. (2024). https://doi.org/10.1038/s41561-024-01598-9
doi:10.1038/s41561-024-01598-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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