地質学:イエローストーンの火山活動は北東方向に移動しているかもしれない
Nature
2025年1月2日
イエローストーンカルデラ(Yellowstone Caldera)エリアの下にある地殻の特性に関する新たな研究によると、同エリアの地下のマグマが北東方向に移動しているかもしれないことを報告する論文が、Nature に掲載される。
イエローストーンカルデラは、地球上で最大級の火山システムである。このシステムは、過去210万年の間に3回の主要なカルデラを形成する噴火を経験しており、それぞれ最大で数千立方キロメートルの溶岩と火山灰を噴出している。これまでのイエローストーンカルデラの地下のマグマ分布の調査は、溶融物に加えて、温度などの地殻の他の特性の変化にも影響を受ける方法論によって制限されていた。
Ninfa Benningtonらは、地殻の伝導構造を推測するために地球の磁場の変化に依存する電磁気地球物理学的手法を用いて、イエローストーンの地下のマグマ分布をモデル化した。研究者らは、少なくとも7つの比較的高いマグマ含有量の地域を、4キロメートルから47キロメートル(地殻とマントルの接点)の深さで特定し、そのうちのいくつかは互いに繋がっていることも判明した。また、Benningtonらは、イエローストーンの西側では火山活動が衰退している可能性がある一方で、北東部のマグマ溜まりでは、将来、流紋岩質噴火(特徴的な溶岩の一形態)が起こる可能性が高いと推測している。著者らは、イエローストーン北東部の地下には最大約440立方キロメートルの溶岩が蓄積されていると推定しており、これは約130万年前にイエローストーンで発生したメサ・フォールズ(Mesa Falls)カルデラを形成する噴火と同等の量である。
研究者らは、イエローストーンカルデラでは過去にも大規模な噴火が発生しているが、この北東部のマグマ溜まりがいつ噴火する可能性があるかについては、さらなる研究が必要であると指摘している。
- Article
- Published: 01 January 2025
Bennington, N., Schultz, A., Bedrosian, P. et al. The progression of basaltic–rhyolitic melt storage at Yellowstone Caldera. Nature 637, 97–102 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08286-z
doi:10.1038/s41586-024-08286-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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