Research Press Release

健康:米国における認知症リスクの増加

Nature Medicine

2025年1月14日

米国では、2020年には約51万4,000人であった認知症患者数が、2060年には毎年約100万人に達する見通しであることを報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。55歳以降の生涯における認知症発症リスクは約42%であると、著者らは推定している。この研究結果は、多様な集団における認知症リスクの軽減と健康的な加齢を促進する公衆衛生戦略の必要性を示している。

認知症の生涯リスクは、国民の意識向上と政策立案に役立つ重要な公衆衛生の指標である。フラミンガム心臓研究(FHS:Framingham Heart Study)では、米国の男性の14%以上、女性の23%が生涯のうちに認知症を発症する可能性が高いと示唆しているが、これは古いデータであり、真のリスクを過小評価し、人種による格差を捉えきれていないかもしれない。

Josef Coreshらは、米国における55歳以上の黒人と白人の15,043人(55歳時に認知症ではなかった)の30年以上にわたる健康データ記録(1987年–2020年)を分析した。平均23年間の追跡調査の結果、55歳時点でのこのサンプルにおける認知症の生涯リスク(95歳まで)は42%であり、75歳以降に診断数が増加することが分かった。より具体的には、55歳から75歳にかけて認知症リスクは約0%から4%に、75歳から85歳にかけては4%から20%に、85歳から95歳にかけては20%から42%に増加した。

生涯にわたる認知症リスクは、男性(35%)よりも女性(48%)の方が高く、白人の参加者(41%)よりも黒人の参加者(44%)の方が高く、APOE ε4遺伝子(APOE:apolipoprotein E〔アポリポタンパク質E〕)を2コピーを持つ参加者(59%)の方が1コピー(48%)またはゼロ(39%)の参加者よりも高いことが分かった。著者らは、毎年認知症を発症する可能性が高い米国成人の数は、2020年の約51万4,000人から2060年には約100万人に増加すると予測している。

Coreshらは、認知症の予防とケアには年齢によって異なる戦略が必要である可能性を示唆している。また、今回の研究対象が黒人と白人のアメリカ人に限られているため、より多様な人種を対象とした研究が必要であると認めている。

  • Brief Communication
  • Published: 13 January 2025

Fang, M., Hu, J., Weiss, J. et al. Lifetime risk and projected burden of dementia. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03340-9
 

doi:10.1038/s41591-024-03340-9

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