微生物学:腸内細菌が砂糖への欲求を制御している可能性がある
Nature Microbiology
2025年1月14日
食事から摂取する糖分を減らすことと関連している可能性がある腸内細菌が発見されたことを報告する論文が、Nature Microbiology に掲載される。この発見は、人間とマウスの分析に基づくもので、肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患の管理に役立つ治療法の開発につながるかもしれない。
動物は、生物学的に糖分を欲するようプログラムされているが、糖分の摂取を管理しないと、糖分の過剰摂取につながり、高血糖や代謝性疾患のリスクが高まる。これまでの研究では、さまざまな食品に対する欲求は、食事の好みを伝える重要な器官である腸から脳に送られる信号に由来することが示唆されている。しかし、糖分に対する欲求の制御は複雑なプロセスであり、腸内微生物の役割は不明である。
Xinmiao Liang、Yong Chen、Shenglong Zhuらの研究チームは、糖尿病を発症させたマウス18匹と2型糖尿病患者60人の血液を分析し、健康な被験者(24人)と比較した。その結果、糖尿病を発症したマウスと人間では、血糖値と食欲を調整するホルモンであるGLP-1(Glucagon-like peptide-1;グルカゴン様ペプチド-1)の分泌を活性化するタンパク質であるFFAR4(Free fatty acid receptor 4;遊離脂肪酸受容体4)の血中濃度が低下していることが判明した。研究者らは、マウスのFFAR4レベルの低下が砂糖への嗜好の高まりと関連していることを観察した。また、FFAR4レベルの低下は腸内細菌Bacteroides vulgatusとその代謝物パントテン酸(pantothenate)の腸内存在量を減少させることも発見した。マウスモデルにおいて、Zhuとその共同研究者らは、パントテン酸がGLP-1の分泌と、それに続く摂食行動を司る脳の領域である視床下部に直接作用する肝臓ホルモンであるFGF21(Fibroblast Growth Factor 21;線維芽細胞増殖因子21)の分泌を促すことを発見した。著者らは、この腸・肝臓・脳の複雑なつながりを検証するために、糖尿病のマウスにパントテン酸を与えたり、B. vulgatusを移植したりした。その結果、いずれもマウスの糖分を求める行動を大幅に減少させることが分かった。
著者らは、代謝性疾患の管理に役立つ可能性がある治療法のターゲットとして、この腸・肝臓・脳の軸を調査するためのさらなる臨床研究が必要であると指摘している。
- Article
- Published: 13 January 2025
Zhang, T., Wang, W., Li, J. et al. Free fatty acid receptor 4 modulates dietary sugar preference via the gut microbiota. Nat Microbiol (2025). https://doi.org/10.1038/s41564-024-01902-8
doi:10.1038/s41564-024-01902-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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