Research Press Release

環境:ノルドストリーム海底パイプラインの漏れによるメタン排出量の調査

Nature

2025年1月16日

Nature Nature Communications に掲載される3つの研究によると、2022年のノルドストリーム(Nord Stream)海底パイプラインの漏出により、約46万5,000トンのメタンが放出された。これは、単一の一過性の事象から放出されたメタンとして、現在までに報告されている中で最大の量であるが、2022年の人為的なメタン排出量のわずか0.1%にすぎない。

海底の天然ガスパイプラインの破裂による漏出は、大量のメタン(重要な温室効果ガス)を海洋と大気中に放出する可能性がある。2022年9月、ノルドストリームのツインパイプラインシステム(バルト海〔Baltic Sea〕の海底に敷設されたパイプラインネットワーク)の損傷により、4つの異なる地点でメタンを主成分とする天然ガスの漏出が発生した。しかし、大気中に放出され、海洋に溶け込んだメタンガスの総量は依然として不明であり、環境や気候に及ぼす潜在的な影響も明らかになっていない。

Nature に掲載される論文で、Stephen Harrisらは、パイプラインの破裂による放出率をシミュレーションし、他のメタン推定値と統合して、漏出による大気放出量をモデル化した。また、著者らは、これらの調査結果を航空機、衛星、および気象用高塔データから導き出された放出推定値と比較した。Harrisらは、約46万5,000トンのメタンが大気中に放出されたことを発見した。漏出による大気中への放出量は、2022年の天然ガス部門からの排出量の約1.2%、農業からのメタン排出量の0.3%に相当する。

Nature Communications に掲載される論文では、Martin Mohrmannらは、バルト海の異なる地域と海洋保護区における溶存メタンの拡散について調査した。著者らは、バルト海の14%で平均的な自然レベルの5倍の濃度を観測したと指摘している。このことは、23の海洋保護区に影響を与えている可能性があるが、生態系への影響は不明である。

Nature Communications に掲載される2つ目の論文では、Friedemann Reumらは、海水に溶け込んだメタンが大気中に二次放出される量を定量化した。著者らは、そのような排出の規模と分布を推定することができ、パイプラインから漏出したメタンの行方を追跡するのに役立った。

Harris, S.J., Schwietzke, S., France, J.L. et al. Methane emissions from the Nord Stream subsea pipeline leaks. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08396-8
 

Reum, F., Marshall, J., Bittig, H.C. et al. Airborne observations reveal the fate of the methane from the Nord Stream pipelines. Nat Commun 16, 351 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-024-53780-7

Mohrmann, M., C. Biddle, L., Rehder, G. et al. Nord Stream methane leaks spread across 14% of Baltic waters. Nat Commun 16, 281 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-024-53779-0

 

 

 

doi:10.1038/s41586-024-08396-8

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