健康:GLP-1受容体作動薬に関連する健康上の利益とリスクの調査
Nature Medicine
2025年1月21日
グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP-1RAs:glucagon-like peptide 1 receptor agonists)の使用は、42の健康転帰のリスク低下と19の健康転帰のリスク上昇を含む、広範な健康効果と関連している可能性があることを報告する観察研究の論文が、Nature Medicine に掲載される。この知見は、240万人の参加者のデータの解析に基づいている。
GLP-1RAは、体重減少治療薬としての有用性から、ここ数年大きな人気を博している。アルツハイマー病、変形性関節症、および睡眠時無呼吸症候群などの疾患に対してもGLP-1RAの有効性が研究されている。しかし、GLP-1RAが市販され、広く普及していることから、自殺念慮や胃腸障害(吐き気、嘔吐、および下痢を含む)などの有害事象が報告された例もある。それにもかかわらず、GLP-1RAの健康上の利点とリスクの広い範囲については、まだ解明されていない。
Ziyad Al-Alyらは、アメリカ合衆国退役軍人省(US Department of Veterans Affairs)のデータを分析し、215,970人の糖尿病患者において、GLP-1RAの使用と175の健康転帰との関連を調査した。GLP-1RA以外の抗高血糖薬(血糖値を下げる薬)を使用した対照群と比較した。その結果、GLP-1RAを使用した被験者では、凝固障害や心代謝障害(深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心停止、心不全、および心筋梗塞など)のリスクが低いことが判明した。著者らはまた、物質使用障害、精神病性障害、発作、細菌感染、および肺炎のリスク低下との関連など、現在認識されている以外の新たな有益な効果の可能性も示唆している。一方、GLP-1RAの使用は、悪心と嘔吐、憩室炎、胃炎、腹痛などの消化器疾患、ならびに低血圧、失神、および関節炎などのリスク増加とも関連していた。
Al-Alyらは、今回の知見は観察的なものであり、因果関係を証明するものではないとしている。Al-Alyらは、これらの知見がGLP-1RAの広範な健康効果を特徴づける一助となることを示唆しているが、他のコホートや臨床試験で結果を確認するためにはさらなる研究が必要であることを指摘している。同様に、アメリカ合衆国退役軍人省からのデータは高齢の白人男性からのものが多いため、今後の研究にはより多様なコホートを含めるべきであると認めている。
- Article
- Published: 20 January 2025
Xie, Y., Choi, T. & Al-Aly, Z. Mapping the effectiveness and risks of GLP-1 receptor agonists. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03412-w
doi:10.1038/s41591-024-03412-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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