化学:「液体の金」である尿から肥料を抽出する
Nature Catalysis
2025年1月21日
都市廃水を浄化し、尿から価値ある製品を抽出する仕組みを報告する論文が、Nature Catalysisに掲載される。この仕組みは、作物の肥料など、さまざまな用途に利用できる可能性がある。この研究結果は、経済的および環境的価値を持つ大規模な廃水処理に対する、新規かつ拡張性があり、費用対効果の高いアプローチを示している。
尿には化学物質である尿素が含まれており、尿素は窒素を豊富に含み、肥料の重要な成分である。農業での利用が期待されることから、尿は「液体の金」と呼ばれることもあるが、一般的には廃棄物とみなされている。大量の尿を貯蔵すること、および尿素を有用な化学物質に加工する仕組みは、廃水処理工学における課題であった。
Xinjian Shiらは、電気化学反応を利用して、複雑な精製工程を回避しながら、廃水から尿素を除去し、尿素の有用な固体誘導体である純度ほぼ100%のペルカバミド(percarbamide)に変換した。回収されたペルカバミドは、環境水処理、殺菌、および作物の成長促進など、さまざまな用途に利用できる可能性がある。この反応では、触媒として炭素ベースの電極を使用し、従来の反応よりも低い温度と圧力でペルカバミドを生成するために大気中の酸素を利用した。このシステムは、人間と哺乳類の尿の両方で機能することが判明しており、他の方法と比較して安価で、より純度が高く価値のある最終製品を生み出す。経済分析を行った結果、Shiらは、1日あたり1メートルトンの過炭酸アミドを生産するには、わずか100平方メートルの土地があればよく、約6,382軒の住宅または3,800頭の牛を飼育する農場から尿を集めるだけでよいと計算し、この方法の実現可能性を実証した。
この調査結果は、このプロセスの効率性と拡張性を向上させることに焦点を当てた今後の研究の基礎となる。さらなる進歩は、より持続可能な都市廃水管理の実践と回収された材料の革新的な利用につながる可能性がある。
- Article
- Published: 20 January 2025
Shi, X., Jiang, Y., Zeng, B. et al. In situ electrochemical production of solid peroxide from urine. Nat Catal (2025). https://doi.org/10.1038/s41929-024-01277-3
doi:10.1038/s41929-024-01277-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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