考古学:古代ギリシャとローマの文化がエーゲ海地域に鉛汚染を引き起こした
Communications Earth & Environment
2025年1月31日
エーゲ海(Aegean Sea)地域における鉛汚染は、約5,200年前に始まった可能性があることを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この調査結果は、人間活動による鉛汚染が、従来考えられていたよりも約1,200年早く始まったことを示唆しており、また、ローマ帝国(Roman Empire)がエーゲ海地域に拡大したことにより、約2,150年前に同地域における鉛汚染が大幅に増加したことを示している。
Andreas Koutsodendrisらは、エーゲ海全域から採取した海洋堆積物コアと、ギリシャ北東部のテナギ・フィリッポン泥炭地(Tenaghi Philippon peatland)から採取した堆積物コアの鉛含有量を分析した。さらに、いくつかのコアの花粉と胞子を分析し、その地域における同様の既存データと鉛含有量データを組み合わせ、当時の社会および文化の変化が地域の生態系にどのような影響を与えたかを調査した。
その結果、5,200年ほど前のテナギ・フィリッポンのコアから、人為的な鉛汚染の可能性を示す最古の記録が発見された。これは、バルカン半島(Balkan Peninsula)の泥炭地のコアから記録された、これまでの最古の鉛汚染の疑いのある年代よりも約1,200年も前の年代である。また、著者らは、約2,150年前の植生記録の変化と鉛汚染の増加は、当時古代ギリシャにローマ帝国が拡大したことと関連しているかもしれないと示唆している。この時代は、通貨やその他の物品に使用する金、銀、およびその他の金属の採掘が大幅に増加したことで特徴づけられる。鉛汚染シグナルの増加には、海洋堆積物コアに初めて鉛が存在したことが含まれており、著者らは、これが海洋環境における記録上最も早い鉛汚染である可能性が高いと示唆している。
- Article
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- Published: 30 January 2025
Koutsodendris, A., Maran, J., Kotthoff, U. et al. Societal changes in Ancient Greece impacted terrestrial and marine environments. Commun Earth Environ 6, 25 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-024-01921-7
doi:10.1038/s43247-024-01921-7
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