Research Press Release

がん:CAR-T療法を受けた患者に長期寛解

Nature Medicine

2025年2月18日

神経細胞がんの一種である神経芽腫の患者が、キメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)T細胞療法による治療を受けて18年以上寛解状態を維持しており、追加の治療を一切必要とせずにいる。この研究結果は、Nature Medicine に掲載される。著者らは、これはCAR-T細胞療法を受けたがん患者における最長期間の寛解状態である可能性があると示唆している。この知見は、神経芽細胞腫の小児患者を対象に遺伝子操作を施したCAR-T細胞療法を試験した第1相臨床試験の追跡調査に基づくものである。

CAR-T細胞療法は、患者のT細胞(免疫システムの一部である白血球の一種)を改変し、がん細胞を特異的に認識して死滅させる治療法の一種である。この療法は、白血病やリンパ腫などの一部の血液がん患者の治療として承認されているが、固形腫瘍の患者にはあまり効果がない。神経芽腫は、まれな固形腫瘍がんの一種で、通常は小児に発症する。治療にもかかわらず再発率が高い、治療が難しい病気である。

Helen Heslopらは、2004年から2009年にかけて神経芽腫の小児患者19人を対象とした第1相臨床試験を実施し、その間、神経芽腫で高レベルで発現するタンパク質GD2を認識するように遺伝子操作されたT細胞を試験した。これらの患者のうち11人は、画像診断で確認できる活動性の疾患であった。第1相試験では治療の安全性が確認されたものの、12人の患者が治療後2ヶ月から7年の間に再発神経芽腫により死亡した。残りの7人の患者のうち、5人は治療後少なくとも13年間追跡調査が継続された。Heslopらは、患者の1人は他の癌治療を受けずに18年以上がんが寛解状態にあることを確認した。また、この患者は2人の健康な乳児を出産している。著者らは、寛解期間が18年であった患者を含む、治療を受けた5人の患者において、CAR-T細胞が少なくとも5年間持続した証拠を発見した。

著者らは、この臨床試験で使用されたCAR-T細胞は、現在では共刺激分子を含むなど、最新のCAR-T細胞の設計要素を欠いていることを指摘している。また、治療時に疾患が活発な患者は、疾患の兆候がない患者や治療時の疾患負担が軽い患者ほど、恩恵を受けられない可能性がある。これらのデータは、CAR-T細胞が固形腫瘍患者に長期的な利益をもたらす可能性があることを示唆しており、また、他の研究にも有益な情報を提供しうるCAR-T細胞の挙動に関する生物学的洞察も提供している。

  • Brief Communication
  • Published: 17 February 2025

Li, CH., Sharma, S., Heczey, A.A. et al. Long-term outcomes of GD2-directed CAR-T cell therapy in patients with neuroblastoma. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-03513-0
 

doi:10.1038/s41591-025-03513-0

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