【神経科学】訓練によって老眼に歯止め
Scientific Reports
2012年2月24日
難しい視覚作業を繰り返し行うと、老眼(加齢による近見視力の低下)の人々の視機能を改善できる可能性があることが明らかになった。ただし、今回の研究では、被験者を無作為に実験群と対照群に振り分けておらず、サンプル規模も小さかったため、この研究を実施した研究者は、今回得られた知見を大規模な無作為化比較臨床試験で確認する必要があることを注意点として指摘している。ほとんどの人々は、50歳を過ぎると老眼(presbyopia、ギリシャ語の「目の老化」に由来する言葉)になり、近見視力が低下する。その主たる問題の一つは、近くが見づらいことで、特に光が少ない場合に顕著だ。現在利用できる解決法としては、老眼鏡や遠近両用眼鏡があるが、すべての日常活動に理想的なものとはいえない。今回、U Polatたちは、老眼の人々(30名)と正常な視力の若年者あるいは矯正視力が正常な若年者(合計7名)を対象とした研究を行った。これらの参加者は、知覚訓練プロトコルに沿って難しい視覚作業を繰り返し行う30分間の訓練を少なくとも週3回行い、この訓練コースは3か月続いた。この実験では、知覚学習によって、老眼の人々の視力とコントラスト感度を高めることが可能なことが明らかになり、一部の事例では、視機能のレベルが若年の対照群のレベル並みに改善された。Polatたちは、こうした視機能の改善の原因が、眼の光学性能の向上でないことを明らかにし、老化する脳に、加齢による自然の生物劣化を克服するために十分な可塑性が残されている可能性を指摘している。
doi:10.1038/srep00278
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