【動物行動】雌のボノボは社会的利点があるからヤっているのだ
Scientific Reports
2012年3月2日
雌のボノボ間の性的相互作用を形づくる複数のパターンとこの性的相互作用の過程における発声の役割について説明した論文が、Scientific Reportsに掲載される。こうした声は、生殖行為中に発する鳴き声と音響構造が同じなのだが、今回の研究では、この声が儀式なものになっており、雌同士の結束を強めることのできる、もっと幅広い意味合いを持った社会的シグナルとして機能している可能性が示唆されている。 ボノボの場合には、雌同士が親密な関係になることが多く、こうした親密な関係によって、同じグループの他の構成員に対する社会的権力が得られる。そして、雌同士の結束を促進する機構と考えられるのが性的相互作用だ。今回、Z ClayとK Zuberbuhlerは、ローラ・ヤ・ボノボサンクチュアリー(コンゴ民主共和国)で生息している3つのボノボの集団における雌間相互作用を決定するパターンを調べた。その結果、社会的地位の低い雌は、すべての順位の雌と相互作用する傾向が見られ、その一方で、順位の高い雌同士の相互作用は稀だった。ボノボの雌は、性的接触の最中に交尾の鳴き声を発することがあったが、交尾の鳴き声は、鳴き声を発する者とその相手の順位に有意に影響されていた。順位の低い雌は、順位の高い雌との相互作用中に鳴き声を発する傾向が非常に強く、この傾向は、順位の高い相手からセックスの誘いを受けた場合に特に顕著だった。そして、その観衆の中に順位が最上位の雌がいて、その様子を聞いていた場合には、セックスの誘いを受けた雌は、鳴き声を発することで、その性的相互作用を宣伝することが多かった。 今回の研究結果は、動物のコミュニケーション行動が社会関係の影響を受けると考えられる一例を明確に示している。
doi:10.1038/srep00291
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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