【神経科学】マウスの神経発達に対する電磁波の影響可能性
Scientific Reports
2012年3月16日
マウスの胎仔が携帯電話からの電磁波にさらされると成体期の神経発達と機能に影響が出る可能性があることが、Scientific Reportsに掲載される論文で示唆されている。ただし、論文著者のH Taylorたちは、この新知見をヒトでのリスクにどう読み替えるのかという点が困難な可能性を指摘している。今回の研究は、直接、ヒトやヒト以外の霊長類で研究を実施する必要性を明確に示している。 今回、Taylorたちは、胎仔期のマウスが携帯電話からの電磁波にさらされた場合に生じ得る影響を評価するため、雌のマウスに対して、その妊娠期間中、音声を切った状態の携帯電話からの電磁波を浴びせる実験を行った。この実験中、携帯電話は、ケージの上に設置され、通話中の状態に置かれた。対照群のマウスにも同じ条件で実験を行ったが、携帯電話のスイッチは切られていた。そのときの胎仔が成体になると、異常に活発な傾向が強くなり、不安感が少なく、記憶能力が低下した。また、Taylorたちは、今回の実験で電磁波にさらされたマウスにおいて、このような挙動に関連する脳領域内の神経回路に変化が生じたことを示す証拠も明らかにしている。 齧歯類の妊娠期間はわずか19日で、新生仔の脳は、ヒト新生児の脳ほど発達していない。したがって、ヒトやヒト以外の霊長類で実験を重ねて、今回明らかになったような妊娠中に電磁波を浴びることの潜在的リスクが同じように見られるかどうかを調べる必要がある。今回の研究では、携帯電話を用いてヒトが電磁波を浴びる状態を模倣したが、今後の研究では、標準的な電磁場発生装置を用いて、曝露レベルをもっと正確に解明するべきだろう。
doi:10.1038/srep00312
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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