【言語】単語の定着性に対する文化的影響
Scientific Reports
2012年3月16日
英語、スペイン語、ヘブライ語の合計1千万以上の単語の使用頻度の変動に関する定量分析がScientific Reportsに発表される。 これまでに、16世紀までさかのぼる7か国語の文献がデジタル化されており、これらは全世界の文献の4%以上に匹敵する。こうしたデジタルデータは、言語の進化を体系的に研究するユニークなチャンスとなっている。今回、A Petersenたちは、グーグルのN-gramデータベースに登録された1800〜2008年の英語、スペイン語、ヘブライ語のテキストに含まれる単語の動的特性を分析した。その結果、単語の死滅率が最近になって上昇しており、新たな語彙の追加頻度が低下したことが明らかになった。この点では、デジタルスペルチェッカーが何らかの役割を果たしている可能性がある。つまり、一つの単語の一般的に認められた形態のものの「適合性」が高まり、間違ったスペルの形態や非標準的な形態のものがすたれていったのだ。また、コミュニケーションの効率性の観点による短い単語への偏りや科学の主要言語としての英語の選択を原因とする語彙の変化も見られた。例えば、“X-ray(X線)”という単語は、その同義語である“radiogram”と“roentgenogram”を打ち負かしている。 また、Petersenの研究チームは、新語の成長率の変動において、およそ30〜50年で成長率のピークを打つことを報告している。この30〜50年という期間は、一つの単語が標準的な辞書に採用されるまでの通常の期間に対応しており、ヒトの一世代の時間スケールにも近い。これは、言語が、わずか一世代で劇的に進化を遂げられることを裏づける証拠となる。また、今回の研究は、国際紛争やその他の社会的、文化的、政治的現象が言語の使用に影響を与えうることを明確に示している。第二次世界大戦中には参戦国の言語が影響を受けたと考えられ、その原因として、メディアの関心の共通性と語彙の拡散が進んだ点が挙げられている。他方で、参戦しなかったスペインや中南米諸国に対する影響は非常に小さかった。
doi:10.1038/srep00313
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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