【神経科学】共感やシステム化といった形質がオキシトシンの向社会的作用に及ぼす影響
Scientific Reports
2012年4月27日
オキシトシン(別名「抱擁物質」)の行動的影響と神経生理的影響は、個人の共感指数とシステム化指数、それに、それぞれの状況の感情的側面によって異なるらしい。今回、Scientific Reportsに発表される菊知充(きくち・みつる)たちの研究では、オキシトシンによる向社会的行動の調節は、全員について起こるわけではなく、また、状況のすべての側面において起こるわけでもないことが示唆されている。ただし、この新知見については、もっと幅広い年齢層の男女を反映した参加者による大規模な研究による検証が必要とされる。
オキシトシンは、主に中枢神経系で合成されるホルモンで、人間の向社会的行動の発達に重要な役割を担うと考えられている。これまでの研究では、オキシトシンを投与することで、自閉症スペクトラム障害(ASD)の一部の症状を改善できる可能性のあることが明らかになっている。ASDは、社会的交流やコミュニケーションの障害と反復的行動を特徴とする。
今回、菊知たちは、脳の画像化技術の一つである脳磁図を用いて、被験者がさまざまな顔の表情(幸せそうな表情、怒った表情、無表情、あいまいな表情)を認知する際の扁桃体におけるオキシトシンの影響が、被験者の共感指数(EQ)、自閉症スペクトラム指数(AQ)、システム化指数(SQ)によってどのように異なるのかを調べた。20人の健康な男性が被験者となり、それぞれオキシトシン投与群とプラセボ投与群に無作為にグループ分けされ、EQ、AQとSQの測定が行われた。その結果、SQの高い場合とEQの低い場合、SQが高くEQの低い場合(ASD患者の共通特性)において、オキシトシンが向社会的な行動応答と神経生理応答を高める傾向が見られた。ただし、この傾向は、怒った表情を認知する際だけに見られ、他の表情の場合は見られなかった。
doi:10.1038/srep00384
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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