カプサイシンによるドーパミン作動性ニューロンの活性化
Nature Communications
2012年3月21日
カプサイシンを用いて特定のニューロン集団を急速かつ可逆的に活性化させたことを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。カプサイシンは、トウガラシの活性成分で、灼熱感を引き起こす。この論文に記述されたモデルで、侵襲的な方法や労働集約的な方法を必要とせずに、マウスにおける特定の細胞集団を調節するロバストな遠隔制御型遺伝学的ツールが明らかになった。 ニューロンのサブタイプの電気活動を制御することは、複雑な神経回路の個々の細胞集団の役割を解明するための貴重な手段だ。ただ、最近開発されたニューロン遠隔操作技術は、多くの場合、労働集約的、侵襲的で、組織損傷を起こすおそれもある。今回、R Palmiterたちは、全身注射や自発的摂取によるカプサイシンの投与によって、トランスジェニックマウスの神経活動を高め、ドーパミンの放出を直接誘導できることを発見した。カプサイシンに誘導されたドーパミン作動性ニューロンの活性化によって、ノックアウトマウスにおける生理的反応と行動的反応を投与後数分内に可逆的に変化させることが可能となり、この作用は、約10分間持続した。また、Palmiterたちは、ドーパミンを放出する精神刺激薬の反復投与によって誘発される運動量の増加に似た行動的増感現象も観察した。 さらに、Palmiterたちは、セロトニン作動性ニューロンに同じような方法を用いることで、カプサイシンを用いる方法をさまざまな神経回路に応用できることを明らかにした。Palmiterたちは、このカプサイシンを用いる方法によってニューロンを選択的に活性化することは、ニューロンのコネクトームを解明し、健康状態と疾患状態の生理学的性質や行動とコネクトームとの関連を明らかにするうえで役立つ可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms1749
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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