Research Press Release
不安の源を発見
Nature Neuroscience
2012年4月9日
サルの前帯状皮質の尾側部(pregenual anterior cingulate cortex、pACC)を電気刺激すると、後ろ向きの意思決定が増すことが今週のNature Neuroscience誌電子版の論文で報告されている。この作用は抗不安薬で阻止されるもので、この脳領域は以前、ヒトの不安障害やうつ病との関係が示されており、今回の研究結果からはこの領域が病的な行動を引き起こす仕組みが示唆される。
Graybielらはサルに空気を吹きつける不快な刺激つきの大きな報酬と、空気刺激なしの小さな報酬のどちらかを選択させた。pACCの神経細胞の中には、サルが空気刺激にもかかわらず大きな報酬を選ぶのに先だって発火するものもあれば、空気刺激を避けて小さな報酬を選ぶ前に発火するものもあることがわかった。どちらの種類の神経細胞も大部分は入り交じっているが、pACCのある領域ではサルが空気刺激を避けて小さな報酬を選ぶときに発火する神経細胞のほうが多かった。この領域の神経細胞を刺激すると、サルが空気刺激を避けて小さな報酬を選ぶ可能性が増すが、この作用は抗不安薬を投与すると阻止された。
不安障害やうつ病の人は、費用と利益をトレードオフしなければならない意思決定を行うのに苦労することが知られている。これらの結果は、意思決定における後ろ向きの情動的状態と不安感の制御にpACCが重要かもしれないことを示唆している。
doi:10.1038/nn.3088
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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