分子も干渉縞をつくる
Nature Nanotechnology
2012年3月26日
分子を用いた実験で干渉縞が形成されたことが今週のNature Nanotechnology電子版に報告されている。干渉縞は、波のように振る舞うことを示す典型的な証拠である。粒子が波のように振る舞うことは量子力学(最小の長さスケールで物質の振る舞いを説明する理論)の決定的特徴のひとつであり、今回研究された分子は数ピコメートルという特有の波長を持っている。
電子の干渉縞の観測は、かつて、「物理学で最も美しい実験」と評された。その実験とは、2本の細いスリットを通過した一個一個の電子が検出スクリーンにぶつかるにつれて干渉縞がゆっくり形成されていく様子を記録したものである。最近になって、Markus Arndtらは、400個以上の原子からなる分子を用いた実験において、波のような振る舞いを観測した。今回、Arndtらは、これらの2つの技術を組み合わせることによって、スリットを通過した個々の分子(58個または114個の原子からなる)が検出されるにつれて干渉縞が形成されていく様子を動画で記録した。
波のような振る舞いを実証する古典的な方法は、波である光ビームを一対の細いスリットを通して照射し、スリットの後ろのスクリーンにぶつかった光の強度が位置によってどのように変化するかを測定することである。片方のスリットを通過した波の最大値がもう片方のスリットを通過した波の最大値と一致するところに強度のピークが見られ、2つの波の最小値が一致するところに強度のボトムが観測される。干渉縞というのは、そのようなピークとボトムのパターンのことである。通常の粒子でこの実験を繰り返すと、2つのピークが観測される。各ピークは片方のスリットのみを通過した粒子によって形成されるからである。しかし、量子的粒子のビームを用いると、光の場合と同じように、多くのピークを持つ干渉縞が観測される。Bum Suk ZhaoとWieland Schollkopfは、今回の最新の実験は「量子世界と古典世界の違いに関して新しい知見をもたらすはずである」とNews and Viewsの記事に書いている。
doi:10.1038/nnano.2012.34
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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