開発途上国における再生可能エネルギーのコスト
Nature Climate Change
2012年5月3日
これまでよりもきめ細かなボトムアップ・アプローチによる気候変動研究が行われて、国別の気候のちがいという重要なポイントが示され、さらには、温室効果ガス排出量削減目標の達成に役立つ技術も明らかになった。この成果を報告する論文が、今週、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。
2010年にメキシコ・カンクンで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP16)では、グリーン気候基金などの新機構の設立によって、開発途上国の温室効果ガス排出量削減活動に対する財政支援を行うことに参加国が合意した。再生可能エネルギー技術は大きな役割を果たすのだが、開発途上国における再生可能エネルギーの採用に関する議論では、高度に集中したトップダウン的なコスト分析を用いられてきた。このコスト分析は、国別のちがいと言う重要なポイントを隠ぺいしている。
今回、T Schmidtたちは、非常に大きく異なっている6か国の開発途上国(ブラジル、ニカラグア、エジプト、ケニア、インド、タイ)における太陽光発電と風カエネルギー技術のコストを試算した。Schmidtたちは、きめ細かなボトムアップ的方法を用い、これら6か国すべてにおいて、太陽光発電のコストが風力発電のコストを大幅に上回り(2010年の時点で前者が後者の2.2〜4.5倍)、この傾向が少なくとも2020年まで継続する(1.7〜3.4倍)という結果を明らかにした。ただし、風力発電によるコスト増分(つまり、風力エネルギーのコストと現在使用されているエネルギーのコストの差)は、国によってばらついていた。コスト増分が非常に大きかったのが、ブラジル、インド、タイで、それよりもかなり小さかったのがエジプトだった。逆に、ケニアとニカラグアでは、現在使用されているエネルギーのコストが風力エネルギーを大きく上回っていた。Schmidtたちは、このコスト増分の計算に公正な方法を用いることの重要性を強調しており、現在使用されているエネルギーについては、化石燃料に対する補助金を計算から除外するのが理想的だと考えている。
Schmidtたちは、今回の研究で明らかになった国と技術の関係を示すパターンをもとにして、再生可能エネルギー技術を発達させる最良の方法についても論じている。そして、組織面・制度面の充実した大きな開発途上国では、国内にエネルギー技術別の固定価格買取制度を設けることを通じて、国と技術の組み合わせパターンを踏まえた各国にとって適切な気候変動緩和措置を実施すべきだという考え方を示している。一方、小さな開発途上国は、クリーン開発メカニズムの改革によって成功する可能性が高いとされる。
doi:10.1038/nclimate1490
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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