【生態】抗生物質が雄のカニムシの生殖能力を抑制する
Scientific Reports
2012年4月27日
雄のカニムシに抗生物質テトラサイクリンを投与すると、投与しない場合と比べて、精子生存率が有意に低下する可能性があることがわかった。そして、この抗生物質の毒性は、投与されていない雄の仔に受け継がれたが、雄の孫には受け継がれなかった。今回得られた知見は、テトラサイクリンが雄の生殖機能に複数世代にわたって及ぼす影響を調べる研究をさらに続ける必要があることを明確に示している。この研究成果を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
広域抗生物質のテトラサイクリンにはミトコンドリアの翻訳を阻害する作用があり、これまでの研究で、雄の生殖形質がテトラサイクリンに感受性があるのではないかということが明らかになっていた。今回、J Zehたちは、サソリに似た小さなクモ形類動物であるカニムシ(Cordylochernes scorpiodes)の精液の特徴に対するテトラサイクリンの影響を調べる多世代研究を行った。この研究で、カニムシは、出生時に対照群とテトラサイクリン投与群に無作為にグループ分けされたが、同腹仔については、遺伝的影響を排除するため、それぞれ異なる処置を行った。雌雄の体サイズ、雄の精子数や雌の生殖に対するテトラサイクリンの影響は見られなかったが、テトラサイクリンを投与された雄とその雄の仔の精子生存率が対照群の雄と比べて有意に低かった。ただし、雄の孫には、このような影響は見られなかった。Zehたちは、テトラサイクリンが雄の生殖系列におけるエピジェネティックな変化を誘発すると推測している。エピジェネティック変化とは、DNA塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の変化をいう。
doi:10.1038/srep00375
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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