【人間行動】オンラインゲームのプレイヤーに見るヒトの移動性
Scientific Reports
2012年6月15日
オンラインゲームのプレイヤーの移動性と社会的・経済的相互作用に関する定量的な解析が行われた。この研究は、人間の行動、特にその移動性をテーマとした大規模研究の対象としてのオンライン社会の可能性を明確に示している。結果を報告する論文は、Scientific Reportsに掲載される。
デジタル技術の最近の進歩で、ヒトの活動と移動性に関する膨大なデータが集まった。例えば、携帯電話の通信記録やオンライン上のソーシャルネットワークが、ヒトの移動性の代理指標として用いられてきた。しかし、ヒトの移動性に関する統一理論は確立されていない。今回、S Thurnerたちは、Pardus(多人数参加型の大規模オンラインゲーム)のプレイヤーによって構成される社会全体と1,000日間の研究期間中のプレイヤーの動きとその社会経済活動に関する全情報を調べた。Pardusは、オープンエンド型ゲームで、35万人以上のプレイヤーがバーチャルな未来型社会に住んでいる。この社会は、国に似た地域に分けられており、そこでプレイヤーは友達を作り、戦い、商品の取引と生産を行う。大部分のプレイヤーは、その活動の中心となる本拠地をもっているが、そこから隣接地域に移動することもできる。
今回の研究で、大部分のプレイヤーは、異なる地域間を移動するのではなく、1つの地域内で移動する傾向が明らかになった。このことは、プレイヤーの動きが地域間の物理的距離だけでなく、ゲームの世界における社会経済的境界の存在によっても制約されることを示唆している。もう一つ重要だったのが、プレイヤーがさまざまな場所を習慣的に訪れる際の正確な順序で、このことは、長期記憶効果が何らかの役割を担っていることを示唆している。これら2つのメカニズムは、空間的制約と時間的制約の両方が、ヒトの移動性を支配する法則を解明するうえで重要なことを示唆している。
doi:10.1038/srep00457
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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