人為的撹乱によって分断される生態系の相互作用連鎖
Scientific Reports
2012年5月18日
太平洋の遠く離れた環礁における生態系の相互作用連鎖の研究が行われた。森林の転換などの人為的な撹乱によって、複数の生態学的相互作用の間の結びつきが損なわれ、その結果、この連鎖が大幅に短縮され、あるいは消滅してしまう可能性が示唆されている。詳細を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
人間が生物多様性に及ぼす影響は、通常、種の豊富さ(種数)の減少によって評価される。それと同じ程度に重要な尺度だが測定の難しいのが、人為的な生態系相互作用の消滅だ。今回、D McCauleyたちは、太平洋中央部のパルミラ環礁における生態系の連鎖に焦点を当てた研究を行った。この生態系連鎖は、人為的な撹乱で変化してしまった生息地と比較的撹乱の少ない区域によって構成されており、生態系連鎖に対する人為起源の影響評価に適している。McCauleyたちは、ここに長い生態系相互作用連鎖が継続的に存在しており、樹木とオニイトマキエイが、海鳥種、森林、土壌、栄養素の流出、プランクトン群集のそれぞれの変化を介してつながっていることを報告している。今回の研究結果では、この複雑な相互作用連鎖が、パルミラ環礁の中でも人為的撹乱が比較的少なく、自然の保護されている区域で維持されている一方で、天然の樹木が伐採され、その後ヤシが植林された区域では、相互作用連鎖が急速に破壊されたことが明らかになった。
ほかの地域の生態系の観察結果でも、数多くの長い生態系相互作用連鎖が人為的撹乱の影響を受けやすい可能性が示されている。ただし、その影響の程度は、撹乱の性質と生態系の特性によって異なると考えられる。今後、このほかに残っている「手付かずの環境」に関する調査が進めば、この種の環境変化が生態系の連鎖状態に与える影響の重要性がさらに解明されるだろう。
doi:10.1038/srep00409
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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