【脳外傷】血液脳関門の機能を変える治療法
Nature Communications
2012年5月23日
外傷性脳損傷が発生した場合に、血液脳関門でclaudin-5タンパク質の発現を阻害すると、脳浮腫が軽減され、脳機能が改善されることを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。この新知見には、血液脳関門を可逆的に改変して、脳内での液体の蓄積量を減らすという新しい方法が示されている。こうした液体が蓄積すると、長期的な脳障害が発生することが多い。
血液脳関門は、脳の組織液と循環血液との間の物質交換を制限する極めて重要な機構だ。外傷性脳損傷が起こると、脳から血液脳関門を透過して循環血液中に拡散する水分が激減し、これが一因となって脳浮腫が発生し、脳障害に至る可能性が生じる。claudin-5タンパク質は、血液脳関門の透過性に寄与していることが知られている。
今回、M Campbellたちは、claudin-5を用いて脳浮腫に伴う症状を緩和できることを明らかにした。この研究では、脳損傷のマウスモデルに低分子干渉RNAを投与して、claudin-5の発現を抑制する実験が行われた。すると、脳の組織液から循環血液へ移動する水分が増加し、その状態が投与後最大72時間継続した。その結果、脳浮腫は軽減し、認知機能が改善した。
Campbellたちは、今回の研究で得られた知見が、脳内での液体の蓄積が主たる原因となって発症し、命を落とすこともある各種神経疾患にとって重要な意味をもつ可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms1852
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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