【疾患】集団的挙動が肥満の罹患率に影響するのか
Scientific Reports
2012年6月15日
肥満や一部のがんなどの非伝染性疾患(NCD)の蔓延の根底にある物理的機序の解析結果を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。この研究成果は、公衆衛生政策の設計に重要なものとなる可能性がある。
肥満の罹患率は、多くの国々で増加しているが、その根底にある駆動要因の特定が難しい場合がある。過度の体重は、カロリー摂取量の増加と運動不足が関係しているため、個人の生活習慣が肥満防止活動の重要な側面とされてきたが、肥満とそのほかの非伝染性疾患の罹患率には強い空間的クラスタリングが見られ、集団的挙動を支配する諸過程も関与している可能性が示唆されていた。
今回、H Makseたちは、統計物理学を用いて、疾患の空間拡散を定量的に調べた。そして、米国疾病予防管理センターのデータを用いて、米国全土における肥満罹患率とがん死亡率の変動に関して、相関とクラスタリングを調べた。こうした非伝染性疾患の蔓延は、二次相転移の臨界点における物理系を想起させるとMakseたちは指摘する。
今回観察された肥満と糖尿病の変動は、食品の消費に関連する業界、例えば、スーパーマーケットとレストランで見られる活動に非常によく似ているが、Makseたちは、肥満の罹患率と経済指標の間に因果関係を確立できなかった点も指摘している。食品経済の変動が肥満に影響を与えるのかどうか、そして、食品産業が肥満関連需要に反応するのかどうかを解明するには、今後の研究が必要となる。
doi:10.1038/srep00454
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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