【気候科学】熱帯低気圧の進路予報の精緻化
Scientific Reports
2012年6月15日
熱帯低気圧の進路予報の精度を高めるための単純な統計的手法が考案された。これは、熱帯低気圧の実際の動きに関して、一般的な予想平均進路からの逸脱の統計的特性を利用した方法であり、特に上陸前の段階で、このほかの熱帯低気圧進路予報コーンを補完するために利用できる可能性がある。この研究成果を報告する論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。
ハリケーン(熱帯低気圧の一種)は、極端な大気事象で、人口密集地域に上陸すると壊滅的な被害が発生する場合がある。ハリケーンの進路予報には、いくつかの方法が用いられており、同じ地域における過去のハリケーンのデータを用いて、本格的な数値シミュレーションを行うことなどがあるが、ハリケーンの進路は予測された平均進路から逸脱する傾向があるために、進路予報が不正確になることがある。
今回、H Kellayたちは、統計物理学の手法を借用し、ランダム運動の特徴解析のための強力なツールである平均二乗変位(MSD)に関する普遍的な統計法則を用いて、ハリケーンの平均進路からの逸脱をモデル化できることを明らかにした。そして、国立ハリケーン・センター(米国)のデータを解析して、大部分のハリケーンの動きがMSDの法則に従うことも明らかにした。また、Kellayたちは、この方法を用いて、2008年に米国テキサス州沿岸に被害を与えたハリケーン「アイク」と2009年にメキシコ太平洋沿岸に上陸したハリケーン「ヒメナ」の実際の進路を正確に予測した。
doi:10.1038/srep00446
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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