【海洋科学】エル・イエロ島近くでの海底噴火が周辺の海洋生態系に及ぼした影響
Scientific Reports
2012年7月6日
2011年にカナリア諸島のエル・イエロ島付近で発生した海底火山の噴火で、周辺海域のプランクトン群集の活動と構成が著しく変化したという見解が示された。この研究は、海底噴火が海水の化学的性質をどのように変え、周辺の生物群集にどのような影響を与えるのかと言う論点に関して新たな知見をもたらした。詳細を報告する論文は、Scientific Reportsに掲載される。
海底活火山は、海に流出するマントル由来のガス、溶質、熱の主な生成源であり、こうした流出物は海水と反応して、物理化学的異常を引き起こし、海洋生態系に影響を及ぼす可能性がある。しかし、海底火山活動が周辺の生物相、特にプランクトン群集に与える短期的影響については、解明が進んでいなかった。
今回、E Fraile-Nuezたちは、2011年10月のエル・イエロ島付近での海底噴火を原因とする極度の物理化学的擾乱の評価を行った。エル・イエロ島は、北東大西洋亜熱帯の最も豊かで最も感受性の高い生態系の一つだ。この評価の結果、この海底噴火によって、海水の温暖化、酸性化、脱酸素が起こったことが判明した。これらの過程は、全球的気候変動の主要なストレス因子でもあり、これまでに地元の海洋生物群集に著しい変化をもたらした。影響をうけた海域では、魚群が見られなくなり、海面には魚の死体が浮かんだ。また、プランクトン群集の活動と構成も影響を受けた。今回の評価結果は、海洋生物に対する将来的な気候変動の影響可能性の解明を進めるものと考えられる。
doi:10.1038/srep00486
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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