Research Press Release
腫瘍の細胞死を活性化させるための合わせ技
Nature Chemical Biology
2012年6月4日
p53の活性化と同時に阻害することでがんの細胞死を生ずる新たな標的が、今週の『Nature Chemical Biology』で発表される。
p53はさまざまなストレスに対する細胞の反応を調節する腫瘍抑制因子であり、その活性化で細胞死が促進されることが知られている。がん細胞のp53を活性化させた場合は、細胞死ではなく可逆的な増殖停止が起こることが多い。しかし、p53の活性化に応じた「増殖停止か細胞死か」という細胞の反応を支配する経路は、解明が進んでいない。
Joaquin Espinosaたちは、ゲノム規模のスクリーニングを行い、細胞死に至る細胞に照らして増殖停止を行う細胞でp53の活性化に対する反応を変化させている遺伝子を発見した。研究では、p53に対する細胞の反応に影響を与えることが従来知られていなかった経路が複数見いだされ、p53の活性化と同時にタンパク質キナーゼATMおよびMETの阻害を行うと細胞死が促進されることが示された。この2つのキナーゼの阻害剤はともに入手可能なものであるが、単独では有効性を示さないために顧みられずにきたことから、研究チームは、この阻害剤を見直して、p53を活性化させるNutlin-3などの物質との併用で試験することを勧めている。
doi:10.1038/nchembio.965
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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