Research Press Release
メラノーマの新しい治療標的
Nature Medicine
2012年7月23日
腫瘍抑制機構を働かなくするメラノーマ細胞の遺伝的変異についての報告が寄せられている。この変異を標的とすれば、既存の化合物を用いて癌の成長を阻害することができるという。
ほとんどの腫瘍は、癌化を防ぐ重要な防御因子であるp53の機能に直接影響する変異をもつことが多い。しかし通常、メラノーマではp53の変異はめったに見られず、メラノーマ細胞がどのようにしてp53の腫瘍抑制作用に打ち勝つのかはよくわかっていなかった。
Jean-Christophe Marineたちは、メラノーマ患者ではp53を不活性化するタンパク質MDM4のレベルが上昇していることを明らかにした。メラノーマ細胞はMDM4を頼りにして、p53による腫瘍抑制作用を克服し、腫瘍を形成する。メラノーマは、命にかかわる悪性の癌だが、以前に開発されたMDM4とp53の結合を破壊してp53の機能を回復するペプチドがメラノーマの成長を抑制することから、MDM4がメラノーマの治療標的になる可能性が示唆される。
doi:10.1038/nm.2863
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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