Research Press Release
模造クラゲ
Nature Biotechnology
2012年7月23日
自由に泳ぎ回るクラゲの模造品を、シリコン重合体とラットの心臓細胞からつくったとの報告が寄せられている。この研究は、生体組織工学にシステムレベルの定量的方法論を取り入れており、筋肉ポンプの設計に新たな考え方をもたらした。
Kit Parker、John Dabiriたちは、まず最初に、クラゲの泳ぐしくみに関するこれまでの研究を詳しく見直した。そして、クラゲの開閉サイクルの重要な特徴を3つを割り出し、これらを模倣できる生態組織工学的方法を考えた。クラゲの“推進”行程(電気的活性をもつ細胞のネットワークの働きによる、収縮性の傘の迅速で対称的な収縮)は、シート状にしたラットの心筋細胞の電気的刺激によって再現できるかもしれない。ゆっくりした“復元”行程は、ラットの心臓細胞を、元の形に戻る性質をもつ弾性素材上で増殖させることによって真似られる可能性がある。若いクラゲをさらに綿密に分析することにより、泳ぎの基礎となる筋細胞活性化の局所的パターン、全体的パターンが明らかになった。形や筋肉の構造の設計をさまざまに変えることにより、著者たちは、クラゲの泳ぎや摂食行動をほぼ正確に模倣したミリメートルサイズの模造クラゲの作成に成功した。この研究で編み出された定量的逆向き組織工学手法は、治療への利用を考えた組織工学にも応用可能かもしれない。
doi:10.1038/nbt.2269
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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