【音楽の進化】「歌は世につれ」と言うけれど
Scientific Reports
2012年7月27日
“Million Song Dataset”という音楽録音のデータセットに収められている楽曲の定量解析が行われ、現代ポピュラー音楽の進化の過程で出現した、いくつかのパターンが特定された。今回の研究では、過去50年間にポピュラー音楽の音量レベルが上がり、音高推移が抑制され、音色が均質化したことが示唆されている。この結果を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
音楽は、言語と同様に、文化的表現の重要な一形態だが、その根底にあるパターンが、長期的にどのように変化してきたのかについては解明が進んでいない。今回、J Serraたちは、Million Song Datasetを用いて研究を行った。Million Song Datasetには、1955~2010年の音楽録音について、音高、音色と音量に関するデータが収められており、ポップスからロック、ヒップホップと多彩な音楽ジャンルをカバーしている。Serraたちは、現代の欧米ポピュラー音楽における音高、音色と音量の一般的な利用の特徴を示す、いくつかの統計的パターンと指標について報告している。これらのパターンの多くは、50年以上にわたって変化しておらず、この種の音楽の作曲では、既存の型にはめようとする傾向のあることが示唆されている。また、これに加えて、ポピュラー音楽の進化における3つの重要なトレンド(抑制的な音列、音色の同質化、平均音量の増加)も観察された。
この結果をもとに、Serraたちは、現代の技術を用いて昔の楽曲を再録音し、その際に、音量を上げ、コード進行を少し単純化し、新しい楽器の音色を加えれば、斬新で時代感覚に合った曲と受け取られる可能性があるという見方を示している。今後、過去の音楽のデータベースをさらに開発すれば、音楽史上の大きな転機を定量化し、特定のジャンルやアーティストの特徴の進化という、捕らえにくいテーマを解明できるようになるかもしれない。
doi:10.1038/srep00521
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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