【代謝】体内脂肪の調節に寄与するシグナル伝達経路
Nature Communications
2012年6月13日
インスリンに関連する2つのシグナル伝達経路が、脂肪細胞中で活性を示し、食餌誘発性の肥満をコントロールしていることが明らかになった。脂肪細胞中のインスリン経路とインスリン様増殖因子‐1(IGF-1)経路については、数多くの組織中で栄養素に対する応答を調節する役割を果たしていることがすでに知られているが、今回の研究では、さらに新たな機能が判明した。この研究成果を報告する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。
インスリンとIGF-1は、脂肪細胞表面上の特定の受容体に結合することで、脂肪細胞の分裂と分化を調節している。インスリンとIGF-1の生理的作用は一部重複しているので、この2つの経路は、一方に異常が生じても、もう一方がそれを補償する関係にあり、そのことは、多くの動物モデルを用いた機能研究で明らかになっている。今回、R Kahnたちは、脂肪細胞上のインスリン受容体とIGF-1受容体を特異的に欠損しているマウスを作製して観察した。すると、これらのマウスは、正常なマウスよりもかなり痩せ、加齢しても糖尿病の症状を示さず、高脂肪の食餌を与えても体重は増えなかった。また、安静時の燃焼カロリー量も正常なマウスより多かった。ただし、その理由を正確に解明することはできなかった。
この新知見は、インスリンとIGF-1のシグナル伝達経路が、脂肪組織の発生と機能、そしてエネルギー消費を調節するうえで重要な役割を果たすことを明確に示している。
doi:10.1038/ncomms1905
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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