【金融ネットワーク】中心性が高すぎる銀行もつぶせない?
Scientific Reports
2012年8月3日
金融規制当局者と金融政策立案者は、「大き過ぎてつぶせない」金融機関だけでなく、「中心性が高すぎてつぶせない」金融機関にも注目すべきだとする見解を示した論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。今回の研究は、金融危機の際に米国連邦準備銀行が行った緊急融資を分析し、金融ネットワーク内で個々の金融機関が占める位置の重要性を明確に示している。
金融システムの大きな部分で決済不履行が起こるリスク(システミックリスク)は、金融機関間の金融エクスポージャーネットワークに依存しているが、一つのネットワーク内で、金融システムの安定にとって最も重要な金融機関を特定しようとしても、広く受け入れられた方法がない。今回、S Battistonたちは、フィードバック中心性の指標(例えば、PageRank)にヒントを得て、システムに対する影響を示す新しい指標を導入し、これをDebtRankと命名した。そして、このDebtRankを用いて、2008~2010年に実施された総額1兆2000億米ドル(約96兆円)の緊急融資プログラムで米国連邦準備銀行から融資を受けた金融機関の情報に関して最近発表されたデータセットの分析を行った。
その結果、このネットワークにおいて、緊急融資の主な対象となった22の金融機関の中心性が、金融危機のピーク時に高まったことが判明した。このことは、これらの金融機関の1つが決済不履行を起こせば、ネットワーク全体に及ぼす経済的影響がもっと大きくなることを意味する。したがって、個々の銀行が小規模なショックを分散的に受けた場合でも、金融システムの大きな部分の決済不履行を引き起こす可能性がある。Battistonたちは、今回の研究で用いられた影響のネットワークが、未解明の現実のネットワークの代用物であるため、今回の研究で得られた知見を取り上げる際には注意を要する点を指摘している。それでも、今回の研究では、DebtRankを用いることで得られる知見の種類が明らかになった。
doi:10.1038/srep00541
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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