ゲノム塩基配列解読で得られた赤痢の流行に関する手がかり
Nature Genetics
2012年8月6日
開発途上国における細菌性赤痢の最も一般的な原因であるソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)のグローバルコレクションを用いてゲノム塩基配列解読が行われ、その結果を報告する論文が、今週、Nature Genetics(オンライン版)に掲載される。この研究は、最近の細菌性赤痢の流行の過程に関する手がかりをもたらしている。
ソンネ赤痢菌は、ヒトに適応した大腸菌で、毎年約1億5千万症例にのぼる赤痢の原因菌である。過去において、ソンネ赤痢菌は、開発途上国における細菌性赤痢の主要な原因の一つとなっていたが、最近になって、経済移行国でも出現し、経済発展や衛生状態と水質の改善と結びついていることが多い。
今回、N Thomsonたちは、過去65年間に単離された132の地域と時代に分布するソンネ赤痢菌の全ゲノム塩基配列解読を行った。そして系統発生解析が行われ、感染力・病原性の強い菌株の出現時期と伝播経路を示した詳細な進化史が得られた。その結果、現在の赤痢菌感染は、最近、ヨーロッパから外へ伝播した、いくつかの正体の明らかな細菌系統に由来する少数のクローンが原因であることが明らかになった。また、Thomsonたちは、この細菌系統の伝播において抗菌薬耐性が何らかの役割を果たしたと考えている。さらに、Thomsonたちは、水質が改善された経済移行国における赤痢発生率の上昇原因として、Plesiomonas shigelloidesへの感染が減ったことを挙げている。P. shigelloidesは、交差免疫をもたらし、一部の汚染された水から見つかっている。
doi:10.1038/ng.2369
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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