【生物学】光合成を行う昆虫?
Scientific Reports
2012年8月17日
アブラムシにおける光合成によるATPの合成に有機色素カロテノイドが関与している可能性を明らかにした論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。昆虫における光合成によるATP合成を示す初めての暫定的証拠と考えられるものが、今回の研究で示された。
カロテノイドは、植物、藻類と一部の細菌と菌類の葉緑体と有色体で自然に生成され、光合成に関わっている。アブラムシのゲノムは、他の昆虫のゲノムと異なり、カロテノイドの合成に必要なタンパク質がコードされており、この遺伝子は、菌類からの遺伝子の水平伝播によって獲得された可能性が非常に高い。したがって、アブラムシは、カロテノイドを合成する機能を備えていると考えられているが、この合成系の生理的機能は、解明されていない。
アブラムシのカロテン量は、環境状況に応じて操作でき、アブラムシの体色はカロテン量を反映している。今回、M Capovilla、A Robichonたちの研究チームは、オレンジ色、緑色、白色のアブラムシ系統を比較して、その結果、オレンジ色と緑色のアブラムシの体内のカロテノイドが、光の吸収とこの光エネルギーを用いた補酵素NAD+の還元に関与することを示唆する証拠を得た。これによって、ミトコンドリアにおけるATP合成が駆動されるのだ。今回の研究で得られた知見は、アブラムシに古い光合成系が存在していることを示唆しているが、これに関与する機構は解明されておらず、この光合成能力が適応優位性をもたらすものなのかどうかも今後の研究を待たなければならない。
doi:10.1038/srep00579
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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