【がん】乳がん発症リスクは数世代後まで伝わる
Nature Communications
2012年9月12日
妊娠中のラットに高脂肪食、あるいは、性ホルモンのエストラジオールを加えた食餌を与えたところ、その子孫における発がん物質誘発性乳がんの易罹患性が高まることが判明した。この新知見は、複数世代にわたる発がんリスクの遺伝を調べる研究にとって重要な意味を持つ可能性がある。この結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
妊娠中のラットに高脂肪食、エストラジオールやその他の化合物を与えると、雌の子孫の乳がんリスクが高くなることは、これまでの研究で明らかになっていた。今回、S de AssisとL Hilakivi-Clarkeたちは、この発症リスクが、その後の2世代においても持続することを明らかにした。この実験では、妊娠中のラットに高脂肪食、あるいは、エストラジオールを加えた食餌を与え、このラットから生まれた娘ラットを交配して孫娘ラットを生ませ、この孫娘ラットを交配して、ひ孫娘ラットを生ませた。そして、娘、孫娘とひ孫娘のラットに対して、ラットに乳がんを引き起こすことの知られた発がん物質を投与した。この実験の結果、これまでに得られた知見が確認されたことに加えて、高脂肪食を与えられた母親から生まれた娘ラットの乳がん易罹患性が高いことが明らかになった。孫娘ラットも、対照ラットより乳がん発生率が高かったが、ひ孫娘ラットはそうならなかった。一方、エストラジオールを加えた食餌を与えられたラットの場合には、ひ孫娘ラットの乳がん発生率が対照ラットより高かったが、孫娘ラットの乳がん発生率は、対照ラットと有意差がなかった。
ただ、今回の研究は、発がん物質をマウスに経口投与して乳がんを誘発する実験に基づいているため、それによって得られた知見を人間に当てはめて推定することには困難を伴う。
doi:10.1038/ncomms2058
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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