【天体物理学】ブラックホールに落ちていくガス雲のモデル
Nature Communications
2012年9月12日
天の川銀河の中心にあるブラックホールに落ちていくガス雲のモデルを提案した論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。このモデルは、最近の天の川銀河の中心での観測結果に対する一つの妥当な説明と考えられる。
今年に入って、いて座A*(SgrA*、天の川銀河の中心にあるブラックホール)に向かって落下する電離ガスとダストの雲が観測された。この雲は、このブラックホールを周回し、来年には、ブラックホールに最も近づくと予測されている。今回、R Murray-ClayとA Loebは、この雲が、一つの若い低質量星を取り巻く原始惑星系円盤から形成したという考え方を示している。すなわち、SgrA*のまわりに若い星のリングが周回しており、この若い低質量星の当初の軌道は、このリングの内縁部にあった。しかし、この若い低質量星は、この軌道から外れて、今では、楕円軌道上をブラックホールに向けて突き進んでいる。この低質量星は、直接観測するには小さすぎるが、この星に伴う原始惑星系ダスト雲が、その移動に伴って破壊されてきており、その残骸がこれまで検出されてきたとされる。Murray-ClayとLoebは、このモデルが、この雲の特性に関する現在の観測結果に適合しており、このモデルを用いて、今後数年間にブラックホールに接近する、この雲の進化を予測できることを明らかにした。
このモデルは、この雲の特性に関する観測結果を自然に説明できるが、SgrA*を周回する若い低質量星の観測位置を説明できる確率は非常に低いと計算されている。今後の観測によって、このモデルが検証され、この機構が最も妥当なのかどうかが明らかになるだろう。
doi:10.1038/ncomms2044
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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