貿易による炭素排出量の移転
Nature Climate Change
2012年9月24日
世界の炭素排出量は、炭素含有量の多い物品の輸出を制限する政策を採用することでは減少しない可能性を示した論文が、Nature Climate Changeに掲載される。
専門家は、これまでに貿易産品の炭素含有量を測定して、中国など新興経済国の大部分が、炭素の純輸出国になっているという現実を明らかにしている。また、多くの専門家が、物品を輸出する際に炭素含有量に課税して、炭素排出量の国外移転を防止すべきだと提案している。今回、Robert MarschinskiとMichael Jakobが、そのような提案に対して異議を唱えている。貿易理論では、物品の貿易を生産要素の貿易と同じものと考える。例えば、物品の生産に一定量の化石燃料が必要な場合には、その物品の貿易は、それに伴う炭素排出量(生産要素)の貿易と同じものとして計算される。そして、各国の化石燃料の生産性が同じだと仮定すると、安価な化石燃料の供給による恩恵を受けている国家は、炭素含有量の多い物品の生産において、他の国々に対して相対的優位に立つ。したがって、輸出産品の炭素含有量に課税することは、化石燃料の使用量、そして究極的には炭素排出量を抑制する効果があると考えられるのだ。これに対して、MarschinskiとJakobは、現実には、技術の違いや制度の質の違いのために、生産要素の利用が国によって異なっていると報告している。そして、各国の輸出産品に含まれる生産要素(炭素)と貿易相手国から輸入する産品に含まれる生産要素は、共通基盤のない2つの数量であり、そのため、この数量の比較によって炭素排出量の純輸出国と純輸入国を判定する作業には注意を要するという結論を示している。
doi:10.1038/nclimate1630
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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