神経科学:フリースタイルラップの演奏で活性化する脳領域
Scientific Reports
2012年11月15日
フリースタイルラップのアーティストのグループが自発的に即興で作詞する際の神経機構を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって調べる研究が行われ、こうした種類の即興が、前頭前皮質内での独特な機能的再編成に関連していることが示唆された。前頭前皮質は、複雑な認知行動の計画や意思決定に関連する脳領域だ。この研究結果を報告する論文が、論文誌Scientific Reportsに掲載される。
フリースタイルラップは、人気の高いヒップホップ音楽の形態で、アーティストが、楽器のビートに乗せて、韻を踏んだ詞や新しいリズムパターンを自由に即興で作り出す。今回のS Liuたちの研究では、フリースタイルラップのアーティストのグループに、同じ背景音楽のトラックを用いて、2つの課題を実行させて、その神経活動を調べた。第1の課題は、自発的な即興によるフリースタイルラップの演奏で、第2の課題は、学習され、十分なリハーサルを経た従来型の詞の演奏であった。
この研究で、Liuたちは、即興の作詞という行動の神経基盤には、前頭前皮質の活動の変化が含まれているとする見解を明らかにし、次のような考え方を示している。前頭前皮質活動の変化は、注意、感情、言語と運動制御を調節する系を変化させることによって、自発的な創作活動を可能にしている可能性がある。そして、即興の作詞には、意図と行動を結びつける脳領域間の関係の変化という特徴があると考えられ、この変化によって、それまでの行動実施の調節が迂回されて、運動制御が、帯状皮質の運動機構によって方向づけられる。また、この活動パターンは、時間とともに進化し、被験者の演奏の革新性によって調節される。こうした機能的再編成は、創造的行動の当初の即興段階を後押しするものだとLiuたちは考えている。
doi:10.1038/srep00834
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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