【医学研究】双極性障害の新たな治療薬候補
Nature Communications
2013年1月9日
エブセレンという化合物にはリチウムに似た治療効果があり、その一方で副作用が比較的少ないことが、双極性障害のマウスモデルの研究で明らかになった。この新知見は、双極性障害に関与する機構として提案されたものの一部が妥当なことを示しており、エブセレンがこれまでより安全な双極性障害の治療法となる可能性も示している。この研究成果を報告する論文が、今週、掲載される。
双極性障害は、気分障害の一種で、患者の日課や社会的交流を混乱させることがある。この疾患の症状緩和に最も一般的に用いられる薬がリチウムだが、治療用量のわずか2倍で毒性作用を生じる。また、リチウムを用いた治療では、体重増加、喉の渇き、震え、腎臓障害といった副作用のリスクが高い。今回、S Vasudevanたちは、米国立衛生研究所の臨床コレクションライブラリーにおさめられた、過去に臨床試験に用いられたことのある化合物についてスクリーニングを行い、ヒトに安全に使用できるエブセレンが、双極性障害に関与する重要な酵素と考えられる物質の活性を阻害し、その作用がリチウムよりも強いことを明らかにした。さらに、Vasudevanたちは、双極性障害のマウスモデルを用いた研究で、エブセレンが、双極性障害に関連する症状を軽減することも明らかにした。
今回はマウスを用いた研究だったが、この研究で得られた知見によって、すでに臨床試験で用いられた薬物の再活用が促進される可能性があるとVasudevanたちは考えている。これがヒトにおいても可能かどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms2320
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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