エピジェネティクスが語る「成人にいたる物語」
Nature Neuroscience
2013年1月28日
遺伝子発現のエピジェネティックサイレンシング(後成的休止)は、雌ラットにおける性徴期の開始を調節するのに役立っているとの報告が今週オンライン版に掲載される。性徴期の開始時期はきわめてばらつきが多く、これはヒトで特に顕著であり、遺伝要因と環境要因の両者の影響下にあると考えられている。DNAメチル化などのエピジェネティックな機構は環境により調整されることが知られており、したがって今回の研究は、性徴期の開始時期に対する遺伝的影響と環境的影響の収束点について新たな可能性を示すものである。
Alejandro Lomniczi、Sergio Ojedaらは、DNAメチル化、すなわちDNAの特定部位にメチル基を化学的に結合させ、特定の遺伝子の発現を妨げる過程を阻害すると、雌ラットで性徴期の開始を後らせうると報告している。性徴期の前と後とのラットでDNAメチル化の差異を細かく解析したところ、ポリコーム群(PcG)とよばれる転写サイレンサー(遺伝子発現を阻害するタンパク質複合体)のうち2種類が性徴期の開始時点でメチル化によって抑制されていることがわかった。Lomnicziたちはさらに、性徴期の始まりに重要であることが知られているKiss1遺伝子の発現をこれら2つのタンパク質が阻害することを示している。
今回の発見は、PcG遺伝子のメチル化がその発現を弱め、Kiss1の量が増えるようにし、雌での性徴期の開始を知らせるという仕組みを示唆している。
doi:10.1038/nn.3319
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