【神経科学】読む速度を高めるための訓練は失読症の成人にも効果がある
Nature Communications
2013年2月13日
失読症の成人が、読む速度を高めるための訓練プログラムを受けると、読解力と読みの流暢さが向上するという研究報告があった。この訓練を受けた失読症の成人は、典型的な成人並みに成績が向上したとされ、認知処理など、読解と関連する諸過程は成人期に入っても順応性をもつと結論づけられた。
失読症患者の読解力は、健常者より遅く、正確さの点で劣ることが多い。こうした読字障害に対する治療的介入は、成人期に向かって効果が低下し、その理由として、小児期を過ぎると脳の可塑性が低下することを挙げる考え方が提唱されていた。今回、Z Breznitzたちは、コンピューター化された読解速度向上訓練法の実証を試みた。この実験では、110人の大学生(そのうちの55人が失読症)に、時間的制約のある条件下で読解課題を行わせた。この訓練法により、失読症の成人と典型的な成人の読解力が向上し、失読症の成人の成績が、この訓練を受けない典型的な成人と同等になったことが判明した。こうした成績の向上は、訓練後6か月間、持続した。Breznitzたちは、時間的制約に重要な意味があるとし、同じ訓練を時間的制約なしに行った学生に訓練の効果が見られなかったことも報告している。
Breznitzたちは、読解速度向上訓練が、読書中に活性化される脳システム間の同期化を向上させることを通じて、失読症グループと健常者グループの間の読解力の格差を縮めるうえで役に立ったと考えている。ただし、この理論の検証をさらに進めるためには、画像化研究が必要なこともBreznitzたちは指摘している。この訓練が失読症の子どもにも同様の結果をもたらすのかどうかは、今後の検証を待たなければならない。
doi:10.1038/ncomms2488
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