Research Press Release
【神経科学】脳が難聴に適応する過程
Nature Communications
2013年2月13日
聴覚障害者の場合、言語音の処理に通常関与する脳内領域が、手話によって生じる信号を処理するように適応できることが明らかになった。今回の研究では、音を遮断すると、脳内の片側の領域に変化が生じ、手話を経験すると、反対側が変化することがわかった。こうした結果は、言語音の処理に通常関与する脳内領域が、言語処理能力を維持しつつ、異なる入力信号に応じて機能を適応させられることを示している。
先天的な聴覚障害者の場合、神経可塑性(特定の事象に応じた脳の再構成)が上側頭葉皮質(STC)で観察されている。STCは、聴覚処理と言語音の処理に関連する領域である。今回、V Cardinたちは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、さまざまな聴力と手話能力をもつ人々における皮質の変化を弁別した。その結果、左脳のSTCの塑性効果には言語的起源があり、手話の経験によって形作られていること、そして、右脳のSTCの可塑性が感覚の遮断によって形作られていることを明らかにした。
今回の研究で得られた知見は、適応的変化があるにもかかわらず、STCで、感覚レベルと認知レベルで行う計算の性質が保存されることを示している。
doi:10.1038/ncomms2463
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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