湿度上昇による人間の労働能力低下
Nature Climate Change
2013年2月25日
過去数十年間の気候温暖化で湿度が上昇した。今回の研究では、湿度上昇の結果、ピーク月には人々の労働能力が90%に低下したという見解が示されている。また、将来の温暖化に関するシナリオに従えば、大部分の熱帯域と中緯度域で極度の熱ストレスと湿度ストレスを受けるようになり、2200年までに労働能力の低下がさらに顕著になると予測されている。こうした研究結果を報告する論文が掲載される。
温室効果ガスによる温暖化の重要な側面の1つが、全球的な絶対湿度の上昇だ。この湿度上昇によって、熱ストレスのピーク月に熱帯域と中緯度域の人々の活動が制約を受けると考えられている。
従来の湿度に関連した研究の大部分は、気温の持続的上昇ではなく、酷暑と関連した影響に注目していた。今回、J Dunneたちは、空気中の湿度によってほぼ決まる湿球温度の歴史的解析とモデルによる予測に対して、環境熱ストレスを受けている個人が持続的労働を安全に遂行する能力に関する業界と軍隊のガイドラインを組み合わせた。その結果、過去数十年間に、環境熱ストレスによってピーク月の労働能力が90%に低下し、その後も低下が進み、2050年にはピーク月の労働能力が80%に低下するという予測を示した。このモデルで考慮されたCO2排出量が最大となるシナリオでは、ピーク月の労働能力が2200年までに40%未満に低下するとされる。さらに、Dunneたちは、この極端なシナリオでは、熱帯域と中緯度域の人々の大部分が、ピーク月に極度の熱ストレスにさらされて、広範な地域で安全な労働ができなくなり、米国のロッキー山脈の東側などの中緯度域での環境熱ストレスが、世界で最も高温の地域だけで経験されているレベルに達することも報告している。
ただし、Dunneたちは、今回の予測では、気候感度、気候温暖化パターン、CO2排出量、今後の人口分布と技術的社会的変化に関する情報が考慮されていない点を強調している。
doi:10.1038/nclimate1827
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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