【医学研究】幻肢痛と脳の構築との関係
Nature Communications
2013年3月6日
腕を切断した後に幻肢痛を体験することがあるが、その原因は、脳の感覚運動皮質のいろいろな領域間の接続が途絶えていることだとする見解が示された。この新知見は、腕の切断後の幻肢痛の原因が、腕を切断された者の脳皮質再構築の不適応だとする通説に反している。
腕を切断された者は、失われた腕の部分に痛みを感じることが多い。この痛みの原因は、脳の一次感覚運動皮質での失われた手領域の表現に対する感覚入力がなくなり、一次感覚運動皮質が、体の別の部分(例えば、顔)からの入力に応答するようになったことだと一般的に考えられている。ところが、この仮説が不正確なことを示唆する証拠が増えてきている。今回、T Makinたちは、この論争に終止符を打つため、fMRIを用いて、腕を切断された者を調べた。その結果、感覚入力が欠如すると、手領域における構造的、機能的変性という特徴が一般に見られたが、持続的な痛みには、むしろ、感覚運動皮質でのかつての手領域の表現における構造と機能的構築の保存が伴っていた。さらに、幻肢痛は、感覚運動皮質のさまざまな領域間の接続の途絶と関連していることもわかった。
Makinたちは、こうした感覚運動皮質での変化の原因は、かつての手領域からの神経入力の欠如であり、こうした変化の大きさは、各人の幻肢痛のレベルと相関しているという考え方を示している。この新知見が、幻肢痛の複雑性の解明を進めるうえで役立つことが期待される。
doi:10.1038/ncomms2571
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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