Research Press Release
生物工学によって作られた移植可能な腎臓
Nature Medicine
2013年4月15日
生物工学によって作った腎臓が、体外でも、ラットに移植後にも、腎臓として機能し、尿を生産したとの報告が寄せられている。この機能研究はまだラットで行われただけだが、この知見から、患者由来の細胞を利用して腎臓を作製し、拒絶反応を避ける有望な方法が浮かんでくる。
進行した腎疾患患者では、血液透析(器械を使って体内から老廃物や余分な水分を濾過して除去する方法)によって生存率は上昇するものの、治癒の望める治療は臓器移植だけである。しかし、腎臓の提供は不足しており、拒絶反応が起こる例はかなりの数に上り、術後の死亡も未だになくならない。
Harald Ottたちは、ラット、ブタ、ヒトの死体腎から細胞成分を取り除き、腎臓の完全な構造を保ち、体液の濾過、分泌、再吸収に重要な老廃物回収系、尿管をもつ腎臓骨格を作製した。ラットの腎臓骨格にラットの腎細胞と血管細胞とを混ぜて戻した後、臓器再生用バイオリアクターで組織を増殖させたところ、この再生腎臓では尿が生成した。この生体工学による人工腎臓は排泄機能ももち、ラットに移植後も、出血や血栓形成の兆候は見られなかった。
doi:10.1038/nm.3154
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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