【人類学】初期ヨーロッパ人の移動経路を追う
Nature Communications
2013年4月24日
中央ヨーロッパ系の人々のミトコンドリアDNA、特にハプログループHの起源が、新石器時代前期(紀元前5400年)ではなく、新石器時代後期の紀元前2800年頃であったことが判明した。この新知見は、現代ヨーロッパ人の祖先の移動に関するさらなる手がかりとなる。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の組合せの1つであるハプログループHは、紀元前25,000~20,000年頃の東南アジアで出現し、紀元前13,000年の最終氷期極大期に近東からヨーロッパに到達したと考えられている。今では、ハプログループHが、西ユーラシアの現生人類の集団全体のmtDNAの40%以上を占めている。これまで、考古学では、ハプログループHが、後氷期に拡大したと考えられているが、ヨーロッパ人のmtDNAで支配的な地位を占めたのがいつのことで、どのような過程によるものだったのかは解明されていない。
今回、Wolfgang Haakたちは、古代のヒト骨格遺物から採取されたmtDNAの塩基配列を解読し、初期ヨーロッパ人の人口動態を再現した。その結果、これまで知られていなかった大きな遺伝的移行が明らかになり、新石器時代後期(紀元前2800年)と現代のヒトの遺伝的多様性に対する新石器時代前期(紀元前5400年)のヒトの寄与度がわずかなものだったことが確立された。新石器時代後期は、文化と経済が変化した時期であり、新しい汎ヨーロッパ文化がイベリア半島から出現した。以上のデータは、西欧からの大きな遺伝的流入があり、このことが中央ヨーロッパ以外の地域からのヒト系統の流入と関連している可能性があることを示している。
この人口動態の再現は、直接的な較正点に基づいており、後氷期のヨーロッパでの人類史の解明に役立つ。
doi:10.1038/ncomms2656
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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