Research Press Release
【物理科学】反物質の計量
Nature Communications
2013年5月1日
反水素の重力質量の実験的測定が初めて行われた。この結果は、反物質の挙動の解明に向けた重要な一歩といえる。この成果を報告する論文が、今週掲載される。
反物質と通常物質が、重力的に同じような挙動をするという内容の学説が数多く存在しているが、そうではない可能性を全面的に否定できる直接測定結果は存在しない。まさにそうした実験に取り組んでいるのが、CERNの共同研究グループALPHAの科学者たちだ。この実験では、反水素原子を捕捉した後、解放することで、重力下での自由落下を測定する。これによって、反水素の重力質量と慣性質量の比が得られる。もし反物質と物質が重力に同じように応答するのなら、この比率は1となるはずだ。共同研究チームは、この測定を初めて行い、系統誤差がない場合の比率の上限が75であることを明らかにした。また、反重力下での挙動についても、これに近い限界値が得られた。現在のところ、これらのデータによって、より正確な限界値を突き止めることができないが、測定機器と方法に関する今後の展開によって、こうした測定値を向上させることができ、現在示されている予想値からの逸脱の可能性に関する検証の精度を高められると考えられる。
doi:10.1038/ncomms2787
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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