Research Press Release

【進化】B型肝炎の起源

Nature Communications

2013年5月1日

古代の頃、B型肝炎ウイルスの宿主は鳥類であった可能性が高く、その後、宿主が鳥類から哺乳類に切り替わってからヒトのB型肝炎が出現したとする見解が発表された。B型肝炎ウイルスの起源は、宿主のゲノム中に存在する内在化配列の数が少ないため、これまで解明されていなかった。

古ウイルス学の分野では、ウイルス感染後にウイルス由来のDNAが宿主のゲノムに挿入された結果として生じたゲノムの残存物が同定される。今回、Alexander Suhたちは、近縁な鳥類とさほど近縁でない鳥類における、こうしたウイルスの残存物の存否パターンを利用して、鳥類系統への肝炎の侵入に関する時間マップを構築した。その結果、これらのウイルスの一種である中生代の古ウイルスの完全遺伝子配列を発見し、肝炎がこれまで知られていた年代より約6,300万年古いと推定している。これは、白亜紀後期にヘパドナウイルス科のウイルスが存在していたことを示す直接証拠である。また、Suhたちは、約3億2,400万年前に生息していた鳥類の祖先が、おそらく、ヘパドナウイルス科の祖先に感染していたという仮説を立てて、ヘパドナウイルス科のコンパクトなゲノム構成が過去数百万年間の進化において、ほぼ変化しなかったことを明らかにした。

B型肝炎は、世界の人口の3分の1が感染している世界的に重大な健康問題であり、今回の研究によって、B型肝炎の進化の解明に一歩近づいた。

doi:10.1038/ncomms2798

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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