てんかん発作の波を幹細胞で防ぐ
Nature Neuroscience
2013年5月6日
成体てんかんマウスの海馬領域に抑制性ニューロン(神経細胞)の前駆細胞を注入すると、発作の頻度が減少し、行動面の不足を是正することができると報告する論文が、今週オンライン版に掲載される。
てんかん発作には脳内でニューロンが同期して発火することが関与し、しばしば周期的な筋の強縮や意識喪失のような症状を起こす。てんかん発作の強い原因の1つに、抑制性介在ニューロンという一群のニューロンの機能不全がある。このニューロンの主たる役割は、他の神経系細胞の活動を制限することにある。
Robert Hunt、Scott Barabanたちは、マウスを使い学習や記憶に不可欠な脳領域である海馬に抑制性介在ニューロンの前駆細胞を注入した場合、注入細胞は機能を持つ抑制性介在ニューロンになって、マウスの発作頻度を減少させうることを発見した。Huntらは、マウスが注入以前にすでに一度ならず発作を経験していてもこのことが成り立つと報告している。さらに加えて、このような注入によって、マウスがてんかん発作以降示していた行動面の不足も改善できることを示している。
幹細胞に基づく治療はてんかんを含む多くの疾患に想定されているが、今回の研究は、マウス脳に植え付けた幹細胞が症状や発作の発症後でも有効でありうることを示しており、価値ある証拠を提供するものである。同様の処置を臨床に適用するに至るにはさらなる研究が必要とされるが、今回の発見はこの方法の潜在力を明確に示す重要な一歩である。
doi:10.1038/nn.3392
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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