Research Press Release
テロメアの位置効果がヒト疾患を支配する
Nature Structural & Molecular Biology
2013年5月6日
染色体の末端にあるテロメアの短縮は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)という筋肉の疾患にかかわる遺伝子に影響を及ぼす。今週のオンライン版で報告されているこの研究結果は、短縮したテロメア近傍の遺伝子の発現増加がヒト疾患に関与している初めての症例を記載するものである。
テロメアは加齢とともに短縮し、いったん限界の長さに達すると成長休止が誘導され、腫瘍増殖が阻害される。テロメア短縮はまた、染色体末端近傍にある遺伝子の発現に影響する場合がある。この現象を、テロメア位置効果(TPE)という。
Woodring Wrightたちは、FSHDに関連するDUX4遺伝子の発現に対するテロメア長の影響を、FSHD患者、および患者の家族で非発症者から得た細胞で比較した。Wrightらは、DUX4発現がテロメアの短いFSHD由来細胞では大幅に増加していることを発見した。その効果は、テロメア長が減少するほど強く、成長休止が誘導されるよりもはるか以前に起こっており、広くみられるこの筋疾患の晩発性発症や進行をTPEで説明しうると示唆している。Wrightらはまた、影響はテロメアから少なくとも100 kbに位置する遺伝子にも及び、予想されていたよりもはるかに距離が大きいことも発見した。
doi:10.1038/nsmb.2571
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