【生態】イネ科牧草の雑種が洪水リスクを吸収する
Scientific Reports
2013年4月25日
洪水リスクの低下に役立つ可能性のある飼料草類の雑種について報告する論文が掲載される。この新しい雑種は、大部分の温帯草地で栽培されているイネ科牧草のホソムギとそれよりもストレス抵抗性に優れたイネ科牧草のヒロハウシノケグサの交雑種で、それぞれの親栽培種と比べて、降雨事象における流出水量が減ることが明らかになった。
今回、Kit Macleodたちは、2年間の野外実験を行い、イネ科牧草の新しいFestulolium雑種(別名Prior)によって、流出水量が、ホソムギ(Lolium perenne)より51%、この雑種の親栽培種であるヒロハウシノケグサ(Festulolium pratensis)より43%減少したことを明らかにした。そして、実験開始から6か月後、Priorは、その親種と比べて、根系の規模が大きくなり、広範に分布したが、実験開始から2年経つと、Priorの根の数が減り、新たな根の成長が表層土に限られていた。Macleodたちは、Priorによって実証された流出水量の減少は、当初の急速な成長と根系の老化が原因となっている可能性があると考えている。この種のイネ科牧草の雑種は、食料生産を維持しつつ、洪水の発生可能性が低下させる可能性があるという結論をMacleodたちは示している。
流出水の発生に対するイネ科牧草の雑種の長期的効果をもっと大きなスケールで評価し、土地管理と洪水管理にとっての潜在的利益を十分に解明するには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/srep01683
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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